8.学院祭当日 

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最後にステージの前にあるオーケストラの専用スペースから、 指揮者だけがステージに上がってくる。 それと同時に、もう一台のピアノの前には伊集院先生。 指揮者の合図でゆっくりと私だけが演奏する。その音色に絡み合う様に、裕先生のヴァイオリンと伊集院先生のピアノが重なって そのハーモニーが次第に、他の弦楽器にも広がっていく。 殆ど練習すら出来ないまま本番を迎えたDTVTとの共演は、 沢山の人たちに支えられる形で、幕を閉じた。 本当に皆に助けられて届けられたステージ。 演奏が終わった後の拍手は、 凄く嬉しくてゆっくりと立ち上がると、深々と頭を下げる。 お辞儀をして体を起こしたときには、 疲れすぎてる体はほとんど思考が働かなくて、 よろけた体を支えてくれたのは、後ろに居てくれた託実。 「ほらっ、もう座れ。  車椅子、無理すんじゃねぇって」 そんな風に乱暴な口調で言われながら、車椅子へと座ると もう一度、車椅子越しにお辞儀をしてステージを後にした。 「理佳ちゃんに無理させちゃったね。  少し奥で休もうか?  託実の演奏の頃にはまた連れてきてあげるから」 そうやって促されて、私はまた最初の建物へと移動していく。
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