8.学院祭当日 

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「今回彼らと演奏する曲は、隆雪が原曲。  そして、さっき素敵なピアノを聴かせてくれた満永理佳ちゃんが編曲して  この形に辿り着きました。  聴いてください」 怜さんの言葉の後、ステージの上ではドラムスティックを打ち鳴らすカウントが始まり 一斉に空間いっぱいにサウンドが広がっていく。 私が関わった曲が、こうやっていろんな人に聞いて貰えて 凄くかっこよく仕上がってるのが、嬉しくて……思わず体を抱きしめてた。   託実たちの演奏も無事に終わって、最後はSHADEの迫力あるLIVEパフォーマンスで 芸能祭は終幕になる。 残り2日間も、いろんなドキドキを迎えて何度か休憩を挟みながら過ごした最終日の夜。 ダンスパーティー。 凄く行きたかったけど、今まではしゃぎ過ぎたのがたたったのか 発熱してしまって、ドクターストップ。 やむやむ私は学院を後にして、病院に連れ戻される方になったけど 病室のクローゼットの前には、今日、ダンスパーティーで着る予定だった 可愛らしいイブニングドレスがハンガーにつるされてた。 「理佳……」 真っ暗な病室に、託実の声だけが聴こえる。 重たい瞼を開きながら、乱れる呼吸を抑えることも出来なくて 目だけで、託実を捉える。 「バカ……何、無理してんだよ」 「……ごめん……」 声にならない声で小さく告げると、 今度は「何、謝ってんだよ」って託実は言葉を続ける。 そのまま、託実はベッドに横たわる私を布団越しに抱きしめた。 「とっとと熱下げろ。いいな、理佳」 そう言われた託実の言葉に、 目を閉じて合図をすると、私はまた眠りの中に引き戻されていった。
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