第二楽章 「祈りの夏 煌めく季節」 1.隆雪と怜さん 

8/8
前へ
/167ページ
次へ
怜さんの隣、めちゃくちゃ真剣に演奏する隆雪。 時折、怜さんとアイコンタクトをしながら、 一つの音楽の世界を生み出していく。 そんな音に絡み合うのは、高音の綺麗な声。 真っ直ぐな純粋な声は、 聞くものの心を優しく満たしていく。 そんな音楽。 「伊吹、二頁の第八小節。  声が喉に落ちてる。  息をあてる位置を確認して、喉に落とさず、観客側に広げろ」 「はいっ」 ただ聞いてた俺とは違って、 壁際で同じように聞いていた琢也さんは、 ボーカルの子に指示していく。 怜さんも隆雪に何かを支持し、 羚は、今も黙々と一人でさらう様にフレーズを爪弾く。 EIJIさんも、紀天さんの場所にいって 何かを指導しているみたいだった。 此処に居る存在が、それぞれに【熱い何か】を持ってる。 そんな風に感じることが出来た日曜日。 その日俺は、理佳が手伝うからでもなく、 隆雪に誘われたからでもなく、俺自身が純粋に、音楽をやってみたいと思えた。 そして……目指すのは、ベース。 地味かも知れないけど、 黙々とドラムを支えるように演奏していた、ガキが凄いと思ったから。 そしてガキに出来て、俺に出来ないことはないだろうなんて言う 挑戦的な考え。 隆雪と怜さんによってもたらされた、 ベースと言う楽器との出逢い。 それは、俺にとって新たな刺激を感じた瞬間だった。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加