9.12月の行事 

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学校の授業は殆ど自習。  それをいいことに、俺は教室に顔を出した後 音楽室に移動して、相棒のベースを練習する。 昼間、学校でベースを練習して、 学校が終わると、理佳の病室へ。 その頃になると、理佳は少しずつ体調を持ちなおして また時折、ピアノを遊戯室で弾くようになってた。 そんなピアノを練習してる、理佳の傍で俺も ケースから取り出したベースを抱えて、 演奏順どおりに弦を弾く真似をする。 一緒に居るだけで……心が落ち着ける存在。 こんなにも理佳の存在が俺にとって大きくなるなんて、 夏休みの俺には予想も出来なかった。 「なぁ、理佳。  もうすぐ何の日か知ってる?」 練習するピアノの音が途切れた瞬間に、 俺はアイツに顔をあげて問いかける。 「えっと……年越し」 年越しって、その前の行事を素っ飛ばすなって。 「年越しの前、クリスマスだろ。  今なんて、街中クリスマスだらけだぞ。  病院のエントランスにも、デカいクリスマスツリー飾ってるんだぞ」 そうやって言いながら、言葉にしてしまった後に 思わず口元を抑える。 ヤバい、俺……地雷踏んだか? 理佳の表情が曇ってしまったから……。 いやっ、マテ……だけど、アイツは車椅子で前みたいにお遊戯室には行けるようになった。 ピアノも弾けるようになった。 だったら……エントランスに降りることも出来るんじゃないか? だったらクリスマスツリーも見れるはず……。
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