10.クリスマスの奇跡 

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私がピアノを弾いている間、託実は音を出さずにベースを演奏する真似をしてる。 私に遠慮して、音を出さないのを知ってる。 「なぁ、理佳。  もうすぐ何の日か知ってる?」 一曲通して弾き終えた瞬間を狙って問われた言葉に「えっと……年越し」っと 私はバカすぎる回答をした。 何時もはクリスマスなんて存在しない我が家。 今年は……ちゃんとクリスマスがあるのに、 即答する答えは、いつもの日常。 「年越しの前、クリスマスだろ。  今なんて、街中クリスマスだらけだぞ。  病院のエントランスにも、デカいクリスマスツリー飾ってるんだぞ」 託実はそう言い放った後、慌てて自分の口元を抑えた。 多分……今の私が、クリスマスツリーを見れないことを 知っているから? でも託実……大丈夫。 クリスマスツリーは、かおりさんに携帯の写真で見せて貰ったから。 だけど……クリスマスは今までの私には関係なかったの。 今年の心配は……託実が一緒に過ごしてくれるかどうかだから。 「託実……ごめん。  うちの家、クリスマスはないの。  誕生日もクリスマスも、我が家にはもうないの。  私の病院代で沢山お金使わせるから。  小学校の時に、誕生日もクリスマスもいらないって  お父さんとお母さんに言ったから」 違う……。 そんなこと言いたいわけじゃないのに、 素直じゃない私は、すぐにそんなことをいって突き放そうとする。 「でも今年は俺が祝うって言うんだから、  両親は関係ないだろ。  俺が自分が楽しむために、  理佳を巻き込んでクリスマスやりたいだけだ。  でもさ、25日の夜は、隆雪と怜さんのLIVEに一緒に出して貰えることになったんだ。  だから理佳と過ごすのは、イヴの夜でいいか?  親父に話しとおして、小さなクリスマスケーキ用意する。  食べれそうなら食べればいいし、許可出なかったら一緒に飾っててもいいじゃん」 託実……それって一緒に、過ごしてくれるってこと? だけど託実は、25日は隆雪君とLIVE……。 行きたいなー。 流石にそきまでは宗成先生に怒られそうだけど……。 だけど……待って。 24日は私がリサイタルで冴香先生と演奏。 25日は託実がLIVE。 これって……二人のスケジュール、擦れ違ってる。 25日がLIVEなら、24日も託実は忙しいのかな?
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