10.クリスマスの奇跡 

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ステージから紡がれた私の名前。 同時に私を迎えに冴香先生は、ゆっくりと近づいてくる。 託実が車椅子のロックを解除すると、 ドレスを包むコートとひざ掛けを伊集院先生に預けて、 その代わりにボレロを羽織る。 動き出した車椅子は、 託実の手から冴香先生の手によって、ステージの中央へと連れていかれた。 会場内から湧き上がる沢山の拍手。 そんな声に緊張しながら、 車椅子に座ったままでゆっくりとお辞儀した。  「それでは、理佳ちゃんと一緒に演奏する曲を紹介します。  モーツァルトより、2台のピアノのためのソナタ。  聞いてください」 冴香先生が曲を紹介すると、 冴香先生は奥のピアノの方へと歩いていく。 そして私はと言うと、託実が出てきて 車椅子を動かすと、ピアノの椅子へとゆっくりと移動させた。 対面する2台のスタインウェイ。 確か……呼吸を感じるの。 ゆっくりと目を閉じて、意識を研ぎ澄ませる。 深呼吸を繰り返して、ゆっくりと目を開いた時 向こう側から冴香先生のアイコンタクトが送られてきた。 第一音から、重なり合う2台のメロディーは、 ゆっくりとホールに広がっていくのを体で感じながら、 私は、精一杯演奏することに集中した。 沢山の拍手に支えられて、演奏を終えた私は その後、すぐにステージ袖へと戻ったけれど 倒れることも、体調を崩すこともなくて、 ただこの楽しい時間に酔いしれたくて、第二部が終わるまで託実と一緒に ステージ袖で演奏を聴き続けた。 最後には、ゲストピアニストとして伊集院先生と冴香先生のピアノデュオ。 その後は、会場に集まってるお客さん一緒に歌うクリスマスソングメドレー。
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