11.理佳の家族 

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クリスマスイヴの夜。 アイツは憧れの羽村冴香との一曲を無事に演奏し終えた。 20時半頃に終わったリサイタルの後、 親父の持つ病院に戻ったのが21時。 その時は……まだ元気そうだったアイツが急変したのは、 翌日のクリスマス。 暖かくして、マスクも着用させていたのに、 あのバカが、翌朝から熱が出始めたらしかった。 LIVE前に、隆雪と二人、アイツの元を訪ねようとしていた俺の携帯に 親父から届いた一本の電話。 「託実、理佳ちゃん発熱してるから今日は会わせられないよ」 普段、健康な俺とか隆雪が熱を出しても、風邪をひいても どうってことはない。 まぁ、しんどいって言うのはあるけど、生命の危険までは考えられない。 だけどアイツにとっての、熱や風邪がかなり危険な状態を作るって言うことを その時の俺にはまったくわかってなかった。 理佳に逢えないまま、クリスマスのライヴを行って 翌朝、冬休みになった俺は朝から、理佳のもとを訪ねる。 だけど理佳の姿は病室にはなかった。 理佳を探すように、ナースステーションへと駆け込むと 見知った看護師さんの姿を探す。 一番手っ取り早いのが、左近さん。 次が遠山さんだよな。 もしくは……親父……。 キョロキョロと院内を探し回るも、そんな時に決まって すぐに姿を見つけられない。 親父の電話を呼び出すか……。 そこまで考えてた時、 久しぶりに会う裕真兄さんの声が聴こえた。 「託実、どうしたの?」 「理佳を探してて。  アイツ、病室に居ないから……」 そう言った俺に、裕真兄さんは溜息をついて ゆっくりと告げた。
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