11.理佳の家族 

3/13
前へ
/167ページ
次へ
「理佳ちゃんは集中治療室。  今は病院のスタッフさんたちに、理佳ちゃんのことは任せるしかないよ」 「理佳……熱が出てるだけなんだろう?  すぐに元気になって、またピアノ弾けるんだろう?」 親父たちに任せるしかないってことはわかってる。 だけど……俺は、理佳がまたすぐにピアノを弾きながら 俺の傍で笑ってくれるって保証が欲しかった。 裕真兄さんは……その保証をくれるって思ってたのに、 その兄さんが告げた言葉は、俺を谷底に突き落とした。 「託実、理佳ちゃんが発症している突発性拡張型心筋症。  この病気はね、熱が出たり、風邪をひいてしまうと重症化してしまうんだ。  この病気を告知された時から、理佳ちゃんは心不全とか不整脈、血栓塞栓って言う  状態に脅かされてきたんだと思う。  肝臓が悪くなったり、腎臓が悪くなることもある。  息切れ、動機、呼吸困難そんな症状も何度も繰り返す。  宗成叔父さんの治療を受けながら、ピアノも弾けるように元気に過ごせてるように思えてた  理佳ちゃんだけど、やっぱり一進一退を繰り返し続けてるんだ。  告知をされた時には、治療法が殆どなくて18歳まで生きられないって言われてた  理佳ちゃんが、今も闘病で頑張ってるのは医学が少しずつ進歩してるから。    だけど……それでも、救えない命もある。  そうならないように、今もあの部屋の向こうでは皆が闘ってる」   そう言いながら、裕真兄さんは俺をすぐ近くのソファ-に座るように促して 目の前の自販機で購入した、ジュースを手渡した。 受け取った缶ジュースを一気に飲み干しながらも、 理佳のことを思い続ける。 「託実、理佳ちゃんは強い子だと思う。  また元気になって、あの部屋を出てくるはずだよ。  だから今は、信じて託実は待ってよう」    俺の隣で座りながら、裕真兄さんはそう言った。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加