第1章

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チャイムの音が鳴る。 「はい、終了ー。名前書いてるか確認しろよー」 太い男の声が、今まで行われていたテストの終了を告げる。 教室からは、先程までの静寂が嘘のように生徒の声で溢れかえる。 俺は大きく伸びをしたあと、溜息をついた。 一週間続いたテストもようやく終わり、これで心置きなくベッドで寝ていられると思うと嬉しくて涙がでそうだ。 入れ替わりで入ってきた担任の話を綺麗に無視して、帰りの準備を済ませた俺は教室を出た。 ケータイの電源をいれると、一件の受信メールがあった。 開いてみれば、予想どうりの人物からだった。 『本屋に寄ってから帰ります。六時には帰れるかな?晩御飯はカレーがいいな? 優樹』 優樹は俺の親友で、同居人である。 あいつは昔から本が好きで、本屋は二つ目の家のようになっている。 帰りは六時半も考えに入れておくべきだろうと考えた俺は、返信を打った。 『六時を過ぎたら今週の小遣い下げるからな。カレーはいいが人参食えよ。 馨』 さくっと返信してから再び電源をきった。 抗議のメールが面倒だからだ。 下駄箱を過ぎたところで友人に出くわした。 「お、馨じゃん!今からボーリングだけど、行くか?」 「今日は疲れた。明日も行くんだろ?」 「明日はカラオケ!」 友人はピースをしてニカッと笑う。 「じゃあそっちにするわ。たぶん。」 「お前はぶれねーな!後でメールすっから!」 じゃな!と走り出す友人に小さくおう、と返事をしてから俺は歩き出した。
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