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milk tea
あの頃、私の世界は全て、彼女で埋め尽くされていた。
「ゆいちゃん!
続き書いた?見せて!」
休み時間に私のクラスまでやって来て、ノートに書いた物語を読んで行く。
彼女の発案で書きだした他愛無い話を毎日せがんでくれた。
多田千聖(チサト)ーちいちゃんが好きだった。
塾で一緒になったのが最初だった。
「ここ、いいよね?座って。」
私の返事を聞く前に、空いていた隣の席に大人びた体を滑り込ませた彼女。
クラスが違う所為で噂に疎い私は良く知らなかったが、塾の授業が終わって教室の出口に向かう私の背中を叩いたクラスメートが親切に教えてくれた。
「さっき、隣に座っていたの多田さんだよね?」
どうやら、有名人らしかった。
小学校の低学年の時に私達の学区に引っ越して来た帰国子女で、親はどっかの省庁の官僚だと言う。
「へー。」と適当に返事をして聞き流していた私だが、それ以来、塾で一緒になると、多田さんは必ず私の隣にやって来るし、彼女が先に来ている時には、大きな声で「ここー!席取ってあるよ。」と私を呼んだ。
ただ単に「気後れするから」位しか断る理由が無い。
男子の隣は嫌だし、女子は大概グループを作っていて見えない壁に阻まれる。
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