第1章

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 滅びた国――いや、滅びた世界の片隅に、一つの塔があった。それはガラクタを寄せ集めたような異質な冷たい鉄の塔。白い霧に覆われたその塔の中で、男は目覚めた。  自分は誰で、ここはどこなのか。  記憶もなく自分が何者かも分からない中、自分を閉じ込めていた檻をいともたやすく破壊し、冷たく暗い塔の内部を散策する。赤い鉄屑で覆われた重い右腕を支える体は燃えるように熱く、男が歩いた跡は黒く焼け焦げている。  時折高鳴る心臓を左手で締め付けるように押さえ、息を荒くして立ち止まる。かいた汗は肌を通るうちに蒸発していく。  塔の部屋を散策していると、棚の中からカルテのような資料を見つける。ペラペラとめくっていると、その資料さえもチリチリと音を立てて燃えかけてしまい、慌ててカルテを地面に落とした。  ちょうど開いたページを見つめると、自分と同じ赤い鉄屑の右腕を持つ男性の写真が目に入る。  首にはタグがついており、そこには【C-23】と掘られていた。青年は自分の首元を調べ、タグを引きちぎり番号を確認する。  そこには同じ番号――【C-23】が掘られている。男性の容姿を見る。白の髪に赤くギラつく鋭い瞳。被験者名は【ラリア・クーラズ】。どうやらこれが自分の名前らしい、と彼は認識した。 「そこに誰かいるの!?」  後ろから聞こえて来た声に振り向くと、赤色の長い髪に青い瞳をした少女がボロ布を身に纏い部屋の入り口に怯えたように立ち尽くしていた。
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