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「……あなたの持っている本、少し貸していただいてもよろしいですか」
「う、うん」
メイスは抱きかかえていた分厚い本をカランディスに渡す。カランディスは数ページ捲った時点で顔をしかめた。ベルベーヌはそんな彼の後ろから本を覗き込む。
「私にはこの本は読めそうにないですね」
「え、カランディスは読めないのか? 注釈まで付いてるじゃないか」
ベルベーヌにそう言われ、カランディスは目線を本から彼女に移す。
「読めて当然のような顔をされても。君はこれが読めるのですか?」
カランディスの言葉に、ベルベーヌは頷いてその頁を読み上げる。
「『異世界転移装置は【星の海】と呼ばれる世界群の中にある世界を渡るためのものだ。星の海の中にある世界は類似している。同じ魂の者が取り巻く環境は違えど存在している』」
メイスは大きく頷き、カランディスもその一文で信用したようにベルベーヌを見据えた。
「人には何かしら取り柄があるものなのですね」
「カランディス、お前は人を素直に褒められないのか……?」
目を剥いたベルベーヌに「こういう性格なもので」とカランディスは笑みを浮かべる。メイスはそれを笑顔で見据えていた。
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