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それを知ったのは休み時間の時だった。友人と教室前の廊下で立ち話をしていた時に、教室の方から自分の名前が聞こえてきた。同じクラスの男子生徒だった。廊下側に背を向ける格好で数人で話をしている。すぐ後ろに雨宮がいることを彼らは気付かなかった。
彼らは話していた。女性の話を。女性のどこが、どの部分が好きかという話を。そこで雨宮は衝撃を受けた。自分の名前が出てくる時には、決まって身体的特徴がついてくる。胸が大きい。あの脚がいい。身体のラインが最高だよな。
彼女は顔中を、耳まで赤く染め上げその場から逃げだした。耳を塞いで駆けだした。男子中学生なら誰もがするであろう話題。話題にあげなくとも心の中に抱いているはずである興味。異性への関心。それを彼女はまともに突きつけられた。
雨宮洋子は自分の身体がいやらしいと思った。男子の目を引いてしまうこの身体が酷く穢れているように思えた。だがそれはほんの一時のことだった。あまりに不意だったためにパニックのようなものを起こしていただけだった。
彼女は冷静に受け止める。男とはそういうものだ、そういう一面があって当然なのだ、自然なことなのだ、と自身に諭す。気持ちを落ち着かせる。それでも彼女の心中で、ある切り替えが行われた。
私のどこが好きなの。
雨宮洋子は、自分に好意を寄せる異性を毛嫌いするようになった。毛嫌い、と言っても告白してくる人を即座に拒否するというわけではない。彼女もそこまでは徹底しなかった。自分のことをちゃんと見て知って、好きになってくれた人がいるはずだと期待を寄せていたからだ。
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