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しかしその期待は幾度となく裏切られ、期待は願望となり、今では淡い希望になっていた。私のどこが好きなの。その問いかけに、示し合せているかのように彼らは言う。綺麗だから。美人だから。彼女は大きく失望した。容姿を褒めるのは外見しか見ていない証拠だ。その中身は、内側には、生々しくていやらしいものだけが詰まっているに決まってる。彼女は失望の色を濃くしていった。そして、これ以上濃厚に出来ないほどの失望に塗り潰された頃、彼女は思った。   私が誰かを好きになればいいんだ。   大きく失望しても、打ちひしがれたとしても、そこで異性を拒絶することを選ばなかった雨宮洋子は、真っ直ぐな心の持ち主だと言えるだろう。 彼女は、人を好きになろうと積極的になった。ここですぐさま積極的になろうと切り替えられたのは彼女の純粋さ故だろう。容姿ではない私を、私自身を好きになってくれる心の優しい男の子を好きになろう。彼女が抱く男性像はごくありふれたものだったが、ありふれているからこそ、簡単に見つかるわけもなかった。 彼女はここで、最初の一歩を間違えた。手順を踏んで人を好きになる、例えば本城ゆいかのように、一目惚れというきっかけではあるものの、その気持ちを胸に抱いて膨らませながらも、その間に自分の今の気持ちはどうだろうか、一目惚れという一種の理想的な出会い方に惑わされずに、純粋にその人を想っているだろうか、と何度も心中で確認作業を繰り返し、段階を経て、その人を好きになれば、彼女が誤ることはなかっただろう。あるいは手順を踏んでいない事に気付けば、修正することが出来ただろう。 しかしこの時の彼女は、とにかく誰かを好きになろうと躍起になっていた雨宮洋子は、自分の理想像を強引にあてはめようとしていた。そのことに彼女は気付かない。最初から全てが備わっている人。条件を満たしてくれる素敵な人はどこにいるのだろう。探せばいるに決まってる。
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