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四組の生徒達は、給食の時間が学校生活での唯一の安らぎとなっている。それはもちろん、矢田がいないからだ。矢田はクラス担任であるにも関わらず自分だけ他の担任教師のように生徒と共に給食を食べないことについて、生徒指導室で雑務をこなしているからだと言っている。生徒達からすれば理由なんてどうでも良かった。矢田がいなければそれでいい。担任が大嫌いという結束なら、四組はどのクラスよりも強いだろう。ちなみに矢田は生徒指導室にはいるが、雑務などしていない。単に自分の受け持つ生徒達と一緒にいたくないというだけだ。生徒が担任を嫌っているように、担任も生徒を嫌っている。矢田の場合は生徒というより子供が嫌いなのだ。それならばどうしてそんな人間が教師になったのか。理由を知れば改めて矢田は最悪な教師であり最低な人間だと思うことだろう。
園村は手早く給食を片づけようとしていた。小さい頃はよく噛んで食べないとご飯を貰えなかった。今はよく噛むどころか、丸呑みにしたとしても注意を受けることはないし、よく噛まなかったことで翌日の食事を貰えないということもない。それでも小さい頃に培った習慣は抜けないし、そもそもよく噛んで食べるのは食べ方としては褒められることなので、ご飯を食べるペースは人よりずっと遅い。
「どうした園村。そんなに急いで食べて」
園村はいつも給食を綾女と一緒に食べている。机を向かい合わせてはいない。綾女は園村と比べるとかなりの早食いである。彼女曰く、部活の昼練習があるから早く食べないといけないらしいのだが、それにしたって早すぎる。前に彼女が食べる様子を横目で見ていたら、なんと噛む回数が園村の半分以下だった。そのことに彼は、ほとんど丸呑みしているようなものだ、と大きな衝撃を受けた。
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