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昼休みまでまだ五分程の余裕がある。この余裕を作れるのなら給食を残さずに食べられるのではないか、と思うけれど、園村にとっては、ほとんど噛まずに腹に無理やり押し込んだようなものなので気持ち悪さがある。午後の自分の体調を考えると、自分のペースで食べて残した方がずっと良い。  屋上に続く階段の踊り場。わざわざ人目のつかない所に呼び出すということは、それ相応の仕打ちが待っているのかもしれない。園村は身構える。ここで楽観的な、あるいは一般的な考えには至らない。文面の文字は明らかに女の子の文字で、便箋に入れるという手間も考えると、それ相応の仕打ち、などという発想はおよそ思いつくものではない。それなのに園村は思いついてしまう。それも真っ先に頭に浮かんでしまう。本当は告白されるんじゃないかと期待していて、逸る気持ちを抑えつけている、のだとしたら園村誠の学校生活は今より格段に、別格に楽なものになるだろう。  昼休みの始まりを知らせるチャイムが鳴る。それに合わせたように階段を駆け上がる音が近づいてくる。園村は警戒する。屋上への扉は固く施錠されているので逃げ場はない。もしもの時はどうしよう。腕力に自信はないしそれ以前に争い事は嫌いだからひたすら謝るしかないな。呆れるほど情けない腹の括り方をしたところでチャイムが鳴り終わる。それと同時に、一人の女子生徒が現れた。彼女は既に園村がいたことに驚き、園村は警戒を緩めることなく彼女を見る。
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