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青一色の服装というのは、それだけでもう気味が悪い。同じ色ばかりを見ているとそこ以外に目を遣った時に、見える景色が歪んでしまう。かと言って目を逸らせばペナルティを科せられる。その結果、矢田明仁が担任を務める二年四組は、傍から見れば『よくできたクラス』として映っている。一年生からそのまま持ち上がりで進級するので、矢田の酷さを知る生徒は四組以外にいない。
「僕はいつも褒められます。矢田先生が受け持つ生徒さんは素晴らしい、と。担任の指導が行き届いているのですね、と」
自慢話でも披露するように矢田は言う。もちろん、矢田は指導などしていな
い。しているのは支配である。本来ならば厳しく糾弾されるべき教師であり、あってはならない指導者である。そこを矢田はすり抜けている。人望ある教師として、上手くやっている。
「そう言われると僕は、それは違う、と言います。僕は大したことなどしていません、と」
他の教師からは謙遜として取られる態度だが、四組の生徒は誰もが心の中で大きく頷いたことだろう。大したことなどしていない。ろくなことしかしていない。
「代わりに僕はこう言います。生徒一人一人が素直で真面目なだけです。そして」
矢田がそこで言葉を区切る。首を微かに動かし、クラス委員である園村誠と遠矢綾女の二人を見る。見続ける。自分の視線に耐えきれず目を逸らさせ、ペナルティを科すことを目的としているかのように、ねっとりと見つめる。
「クラス委員が優秀だからです、と言います。しっかりしたクラス委員がいるのだと」
園村は汗をかいていた。矢田の視線のしつこさもさることながら、クラス委員、という重責に押し潰されそうになっていた。彼は堪える。潰されないように必死に耐える。後ろ向きな彼にとって、人に期待されることほど恐ろしいものはない。矢田の場合は期待というより責任を放棄して園村と綾女に転嫁しているだけであり、そのことは園村も分かり切っていることなのだが、彼の肩には重くのしかかる。異常なほどにのしかかる。もしこのクラスに何か問題が見つかったら。もしその問題がいじめだったとしたら。マイナスなもしもの連続で、言ってしまえばそれはほとんど被害妄想で、園村は今にも、この瞬間にも、潰えてしまいそうだった。
それなのに。
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