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「お母さんからのメール見た? 返事がないって、お母さんから香里に連絡来てたよ」
「あー、見た見た。生徒会室に戻ったら連絡返すし、気にすんな」
淡々と言う犬山。
ロリカワメルヘン女子は、ニコリと愛らしく犬山に微笑んでいる。
まるで、極寒の中に柔らかく射す太陽の暖かさを感じさせるその笑みに、エフェクトは間違いなくキラキラ系で決定だろう。
そして、私の心臓の音の効果音は、トキメキを現す、ドクンドクンで確定です。
「犬山。その天使のような女の子は?」
先程まで、襟を掴まれ引きずられていた私の背が伸びた。
「俺の妹。今年の一年で入学したって言わなかったか?」
な、なん……だと!?
私にガサツで粗悪な態度しかとらない、犬山の妹っ!?
く、くそ……。
「聞いてないぞ、犬山! こんな可愛い妹殿の話は聞いてない!
さあさあさあさあ、妹殿。是非、私と共に生徒会室でお茶をしましょう。そうしましょう」
犬山に肩をぶつけながら妹殿に寄れば、妹殿はクスリと笑って右手を出してきた。
「生徒会長さんですよね。犬山香里です」
「よ、宜しく」
笑みの眩しさに目を細めて、私は出された右手を握って返す。
渇望していた女子の手の温もり。
最高の柔らかさ。
手を握ったまま妹殿に更に寄れば、妹殿は首を傾げながら一歩下がった。
更に足を踏み出せば、妹殿は困惑したように下がる。
「あ、あの~、なんでしょう?」
妹殿が、つんのめりながら下がるのを良いことに、私が更に歩めば……そこには、待ち構えたように壁が。
これは、壁をドンとさせるしかない。と、今しがた見ていた光景に自分を重ねた。
「きゃっ……」
壁にぶつかった、妹殿の背。握った片手を離さずに、空いた片手で壁へ手をつく。
ーーーーーーーームニッ
「…………?」
ムニッ、とした壁の感触。
おかしい、ドンという音ではない……だと!?
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