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「どうしたんですか?」
「ごめんな……」
フワッと、優しい熱に体を包まれる。この声、この表情、それはずっと俺が見てきた、俺が感じてきた朔夜さんの姿だ。
「記憶……戻ったんですか?」
「あぁ。アンタに出会う前のことも、アンタと愛しあっていた時のことも、何も知らない俺にアンタがいっぱい愛を注いでくれていた時のことも、全部ぜーんぶ覚えている」
「そうですか、良かった……」
腕の中の柔らかな髪に指を通すと、照れ臭そうで幸せそうな笑い声が耳をくすぐってきた。
「朔夜さん……」
肩を優しく掴み、額と額をくっつけて見つめ合う。武家屋敷の隅でひっそりと花開く桜のように頬を染め、目を伏せる朔夜さん。
愛おしいその仕草に胸をときめかせながら、そっと唇を包む。互いの存在を確認し合うように、暫くそのまま動かずにいた。
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