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「俺はもうすぐ役目が終わる運命だったから構わねぇけど、アンタの人生はこれからも続いていくはずだったんだろうし……」
首を左右に振った朔夜さんが、ポツリポツリと呟く。段々かすれていく声と共に朔夜さんも消え去ってしまいそうで、どこにも行かせはしないときつく抱きしめる。
「違います。今、共に此処にいるということは、ふたりは一緒に役目を終えるという運命だったんですよ。朔夜さんのせいでもないし、俺のせいでもない。そうでしょ?」
ね?、とあやすように柔らかな髪に指を通しながら言うと、濡れた顔が安心したように笑った。
「なんだかこれ、凄く気持ちいいですね。まるでゼリーの中にいるみたいだ」
「だってここ、シャボン玉の中だからな」
白い靄の下の弾力性のある地面の上に大の字で寝転がった俺を、柔らかな笑みを浮かべて見つめる朔夜さんが教えてくれる。
シャボン玉、それは俺の思い出。目の前の朔夜さんは朔夜さんの魂なのではなく、俺の記憶の中の俺が作り出した幻なのかもしれないという不安が頭を過ぎる。
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