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「朔夜さん……」
朔夜さんであって欲しいと縋るように頬に触れると、幸せそうに細められた目が、やがてゆっくり閉じていった。
白いこの中で一際輝くピンクに、極上の蜜を見つけた蜂のように自らの唇を重ねる。触れ合い感じ合う熱は、幻なのかもしれないという怯えを一掃させるほど朔夜さんの魂を感じさせる。
全ての不安が消えた俺は、もっともっと深いところで繋がりたいと舌を挿し込む。歯列をなぞりながら一周した口内は、何度も何度も這い回って舌が覚えている感触と寸分も違わず、勝手知ったる其処の敏感な箇所を舌先で愛撫する。
「んふっ……」
俺に必死に縋り付いて鼻から甘い吐息を漏らす朔夜さんに、見せ掛けの余裕はあっさり消え去る。刺激に痺れてくたりと横たわっている舌に襲い掛かり、激しく絡め合う。音のない空間に響くふたりの吐息と淫靡な水音は、神聖なシンフォニーのようだ。
苦しそうな息遣いになった朔夜さんに、名残惜しさを感じつつも唇を離す。すると、目許を赤く染め、濡れた唇を半開きにして、必死に酸素を取り込んでいる様が瞳に映った。香りたつ色香に、下腹部に熱が集まってくるのを感じながら、その妖艶な姿に釘付けになっていると、視線に気付いた様子で潤んだ瞳が此方を見遣る。視線がかち合った刹那、全てを許して包み込むような、慈愛に満ちた微笑を浮かべた朔夜さん。
「朔夜さん……」
繊細な硝子細工を扱うように、何よりも大切で愛しいその体をゼリーのような地面に寝かせる。性急に繋がりたい欲望を抑え、その存在を確かめて感謝するように、全身にくまなく唇を這わせ、ゆっくり高めていく。
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