「きみの想いは、ボクの声」

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「あなたが憑依霊でなければ、名前を教えて?」 (ボクの名前は翼(つばさ)、きみの名前は?) 「わたしは……えーと、冬空かなた」 ボクの言葉に驚いた。その名前をボクは知ってる! (きみは文色 美空〈あいろ みんく〉だね?) 「どうしてバレたの!?」 ボクの声に、美空の驚きが感じられた。 知ってて当然さ。美空はボクが夢中になっているアイドルなんだ。 女優として初出演した役名が、『冬空かなた』だからピンときた。 (ボ、ボ、ボクはきみのファンなんだ、だ、だ、大好きなんだ!) 美空は地上に降りた天使だ。 ショートボブの髪も、広くて可愛いオデコも、形の良い眉も、キラキラと光る瞳も、大好きだ。 「それより困ったわ、責任とってよね」 美空は女子の最終兵器を、ボクの声で言った。 愛の告白を華麗にスルーして。 (き、き、きみの声が、ボクの声になったから?) 「番組の収録があるの。翼は緊張するとドモルみたいね」 ボクのその癖が、引きこもる要因でもある。 「翼が代わりにしゃべってよね」 (そ、そ、そんなのムリだよ!) 「翼のせいで、わたしは引退ね」 それは天使の殺し文句だった。
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