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そう言ったボクの口から、美しく透明な歌声が流れだした。
「Ah~~♪」
その歌声が清風となって、蒼空に舞い上がって拡がる。
自分の口からでた歌声なのに、ボクは感動して泣いていた。
「どお?」
美空に訊かれて、歌い終わっていたことに気付いた。
その声は半分の照れと、半分の誇らしさで、揺れていた。
(感動したよ、美空ならきっと凄い歌手になれる!)
「うふっ、ありがとー。では翼は、わたしの歌手ファン1号ね」
ボクは宝物を手にした。
「でも、事務所が許してくれないの……」
たしかに美空が所属する事務所は、女優で売り出すのを狙っている。
ボクの声には、美空の孤独が感じられた。
ボクと美空は一緒だ。
狭い孤独から抜けだせずに、広い夢の世界にあこがれている。
(きっと孤独の周波数が合ったから、お互いの声が入れ替わったんだ)
「……翼も孤独なの?」
(両親が亡くなって、ボクも死のうとした。
でも美空がいたから、ボクは生きようと決めたんだ)
「……ありがとう。それなら頑張らないとね、もちろん翼の協力で」
そう言った美空に、緊急記者会見が決まったのは翌日だった。
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