「きみの想いは、ボクの声」

5/8
前へ
/8ページ
次へ
ーーーーーーーーーーーーー 「映画の宣伝のために、交際宣言をするのよ」 それを聞いたのは、朝の発声練習の時だった。 (付き合ってもいないのに、記者会見をするなんて!?) 映画の出演が決まり、売り出し中のアイドルと共演するらしい。 しかも話題性と宣伝のために、生放送で記者会見をするのだ。 (きみは平気なの?) 「翼にはわからないと思うけど男は苦手。女の子が好きなのよ」 なんてカミングアウト、ボクと同じなんて! 「仕方がないの、そうしないと事務所が危ないのよ」 そんな大人の事情があるなんて。 ボクの心は、半分の嬉しさと、半分のやるせなさで、廃棄寸前だ。 「とにかく記者会見では、言う通りにしゃべってね」 捨て台詞を残して、美空は眠ってしまった。 憤然として『記者会見 阻止』と検索していると、 「……歌手に、なりたい……」 ボクの声が漏れた。美空の心の寝言か? 美空はオリに閉じ込められた天使だった。 翌日の記者会見を、ボクはテレビで観ていた。 画面の美空は表情が暗く、天使の面影がなかった。 『では美空さん、お付き合いは順調なのですね?』 美空が記者に質問された。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加