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「……春名 綾乃(ハルナ アヤノ) 」
部活の帰りに昇降口に立っていたのは、いつも自分が見つめている彼女。
「遅かったのね、園田 環(ソノダ タマキ)さん 」
にっこりと微笑みながら、名前をフルネームで返されてハッ…となる。
「どうして、私の名前…? 」
「園田さんだって、私の名前知ってるでしょう? 」
肩に掛けた鞄を持ち直し、少しだけ小首を傾げる仕種にさえドキリとして、思わず顔を背けた。
……これで相手が異性なら、間違いなく恋と認めることが出来るのに。
「何してるの? 早く帰りましょう? 」
「帰りましょう…って? 」
「だから…、あなたのこと、待ってたの 」
開けられた昇降口の扉。
吹き込んでくる少し肌寒い風に、環はふるっ…と身体を震わせた。
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