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「……陽が暮れるの、早くなったね 」
「う…、うん 」
返す声が上擦る。
隣を歩く綾乃の、言葉、動作の一つ一つにドキドキして心臓が騒ぐ。
ザクザクと音を立てて歩く銀杏並木。
宵闇の空には、それよりも濃い色の大きな満月。
「……どうして、私のことを待っててくれたの? 」
環の所属する陸上部は今、大会が近くて何時に終わるか分からないのに。
「どうしてかな…? 」
綾乃がふいに足を止める。
「どうしてだと…思う? 」
振り向くと、綾乃は艶やかで蠱惑的な……まるで、今日の月のような微笑みで微笑っていた。
「春名、さん… 」
「環…… 」
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