第14楽章 葬送行進曲

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「どうしてもだ。責任が取れない」 「責任なんて取らなくていい。お願い」  私はキスをせがんだ。 けれど、洵は顔を背けて私を突き放そうとする。 「もう俺に近付くな!」  洵は頭を掻き毟り、唐突に叫んだ。 「嫌よ! 絶対に嫌!」 「杏樹……」  困ったような、怒っているような瞳だった。 「どうして離れなきゃいけないの!? 洵のことが、こんなにも好きなのに!」  私も負けずに叫んだ。 気持ちが溢れてきて瞳に涙が浮かんだ。 「もうこの家には来るな。合鍵も返してもらう」 「嫌よっ! 絶対返さない!」 「それなら鍵穴を変えてもらうまでだ。早くここから出て行け!」 「どうして!? 今まで二人で楽しく生活してたじゃない!」 「いいから早く出て行け!」  洵は部屋に響き渡るような大きな声で言った。  私は突然のことで、わけが分からなくなって、涙を流しながら恨めしそうに洵を見つめ続けたけれど、洵は私の顔を見ようとはしなかった。 「もうしないから。もうキスもしないし、抱いてほしいとも言わない。だからお願い、出て行けなんて言わないで」  泣きながら哀願しても、洵は表情一つ変えずに、玄関の方を指さしたまま私の顔を見ようとはしなかった。 「洵、お願いこっちを見て。好きなの。初めてこんなに人を好きになったの。お願い、私を突き放さないで。どんな形でもいいから洵の側にいさせて」 「出て行け。二度と来るな」  洵は冷淡な声で告げた。 もう駄目だと思った。 どんなことを言っても、洵には届かない。 私は結局、洵にとって必要のない存在だったんだ。
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