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私は突然「そうだ!」と思いついて、急いで外に出る準備をした。
アマービレに行こうと思ったのだ。
客としてアマービレに行けば、洵の演奏が聴ける。
俺に近付くな、もう二度と来るなと言われたけれど、アマービレにも来るなとは言われてない。
私はお金を払って店に行くんだから、洵にどうこう言われるような筋合いはないじゃないかと、自分に都合のいい台詞を並べ上げた。
そうと決まったら私の行動力は早かった。
気分が浮き立った。
洵に会える!
ただの客の一人でもいい。
ファンの一人でもいい。
洵と繋がっていたい。
喋れなくても、触れ合えなくても、ただ洵の演奏を聴くだけでもいい。
それだけでいいから。
それ以上はもう、望まないから。
店のドアの前で私の足が止まった。
私より後から来た人たちは、じっと動かない私を不審に思いながら、私の横を通り抜けて店に入っていく。
そうして私は三組の客に先を越された。
入る勇気が出てこなかった。
思い立ってからここまで来るのは早かったのに、肝心のあと一歩が踏み出せない。
洵に会ったら、どんな顔をすればいいのだろう。
洵はどんな顔をするのだろう。
迷惑そうな顔をされたら……。
そう思うと怖くて堪らないのだ。
「入らないの?」
突然後ろから話し掛けられて、私は驚いた。
そして振り向いて、声を掛けてきた人物を見て更に驚いた。
心臓が縮みあがった。
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