第16楽章  革命のエチュード

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私は突然「そうだ!」と思いついて、急いで外に出る準備をした。 アマービレに行こうと思ったのだ。 客としてアマービレに行けば、洵の演奏が聴ける。 俺に近付くな、もう二度と来るなと言われたけれど、アマービレにも来るなとは言われてない。 私はお金を払って店に行くんだから、洵にどうこう言われるような筋合いはないじゃないかと、自分に都合のいい台詞を並べ上げた。  そうと決まったら私の行動力は早かった。 気分が浮き立った。 洵に会える!  ただの客の一人でもいい。 ファンの一人でもいい。 洵と繋がっていたい。 喋れなくても、触れ合えなくても、ただ洵の演奏を聴くだけでもいい。 それだけでいいから。 それ以上はもう、望まないから。  店のドアの前で私の足が止まった。 私より後から来た人たちは、じっと動かない私を不審に思いながら、私の横を通り抜けて店に入っていく。 そうして私は三組の客に先を越された。 入る勇気が出てこなかった。 思い立ってからここまで来るのは早かったのに、肝心のあと一歩が踏み出せない。 洵に会ったら、どんな顔をすればいいのだろう。 洵はどんな顔をするのだろう。 迷惑そうな顔をされたら……。 そう思うと怖くて堪らないのだ。 「入らないの?」  突然後ろから話し掛けられて、私は驚いた。 そして振り向いて、声を掛けてきた人物を見て更に驚いた。 心臓が縮みあがった。
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