第18楽章 ノクターン 第13番

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人前では泣きたくなんてないのに、私は叫びながら涙を流していた。 半分は自分に言い聞かせるようだった。 洵と出会えたこと、あの素晴らしい夜のこと、それをなかったことにできたらなんて、私にはどうやったって思うことができない。 「あなたはなんて自分勝手な女なの。自分さえ良ければいいの? それで例え、洵からピアノを奪ったとしても。 自分の欲望のためなら構わないの?」 「遠子さんに言われたくない! 遠子さんこそ自分の欲望のために洵を縛り付けていたんじゃない!」 「あなたに何が分かるのよ! 私の何が!」 「遠子さんだって私と洵の何を知ってるのよ! それに洵はピアノを辞めたりしない。どこかできっとピアノを弾いているわ」  それには確信があった。 同時に、そうであって欲しいと願う気持ちから発せられた言葉だった。 すると遠子さんはこれみよがしに大きなため息を吐いて言った。 「これだけは心に刻んでおいて。 あなたは洵のショパンコンクールに出場できる道を奪ったの。 ショパンコンクールは5年に一回しか開催されないし、年齢制限もある。 洵にはラストチャンスだったの。 あなたはそれを奪ったのよ」
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