第18楽章 ノクターン 第13番

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 私はアマービレを出て、目的もなくただ歩いた。  空を見上げると夕焼け色に染まっていた。 赤。 私の一番好きな色。 こんなに悲しいのに、空はなんて綺麗なんだろう。 断層に重なる雲に色をつけて、赤のグラデーションを作っている。 燃えるような赤、情熱の赤。  美しさが染み入るように心に入ってくる。 美しさと切なさは、ある意味では一つなのかもしれない。 そうでなければ、こんなにしっくりと自分の感情と重なったりはしないだろう。  ノクターン第13番。 この夕日に一番似合う曲だ。  あまりにも美しいメロディは、痛切なまでに心を揺さぶる。 静かに流れる雲のように、ゆっくりと穏やかに曲は進んでいく。 悲痛なまでに美しく惹きよせられるハーモニーは、自然と頬を涙で濡らす。 「洵……どこにいるの?」  小さく零れた言葉は、問いかけた相手には届かないだろう。 「もう、会えないの?」  夕日に染まるシグナルレッドの空は、なにも答えてはくれなかった。
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