第19楽章 ノクターン第20番

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「会いに行ったら? コンクール主催者に聞いたら、洵の居場所が分かるかもしれない」 「え?」  ……会いに行く。 全く分からなかった洵の消息。 会いたいけれど、怖い気もする。 会っても、なんて声を掛けたらいいか分からない。 今の私は、洵のお荷物にしかならない。 こんな大事な時期に、洵の邪魔はしたくない。 「会わないわ。会いに行っても、迷惑だと思うし」 「じゃあ、もしも洵から会いにきたら?」 「そんなことあり得るはずないじゃない」 「もしもよ」 「そうね……」  そのまま私は黙り込んだ。 その後に続く言葉を完全に見失っていた。 もしも洵に会えたら。 会えたら……。 私は一体、どうするんだろう。    私は家に帰るとすぐにネットで洵のことを調べた。 遠子さんから貰った紙の内容は、日本ショパン協会のHPに記載されていた文面をそのまま印刷したものだった。  桐谷洵の名前で調べると、過去に洵が受賞した様々なコンクールが出てきた。 けれど、現在の洵のことが分かる記事は日本ショパン協会のHPに載ったあの文面以外は出てこなかった。  私はそれから数日間、洵の名前が記載されているあの紙を片時も離さず生活していた。 バイト中もこっそりポケットの中に入れて持ち歩いていたし、寝る時も枕の横に置いていた。 その紙は、私をとても嬉しい気分にさせてくれ、懐かしく愛おしいもののようにも感じさせた。
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