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時計を見ると深夜0時を過ぎていた。
アマービレはもう閉店しているはずだ。
「ちょっとあんたにお願いがあって電話したのよ」
「お願い?」
「今日、ラストまで働いてくれるバイトの子が急に休んじゃって、閉店作業に時間がかかりそうなのよ。手伝いに来てくれない?」
「はあ? なんで私が」
「彼氏と会う約束してるから早く帰りたいのよ。手伝ってくれてもいいでしょ!」
「嫌よ、私だって明日仕事があるんだから」
「ちょっとくらい遅刻しても、あんたの所の店長なら許してくれるでしょ」
「だからってなんで私が今から手伝いに行かなきゃいけないのよ」
「あらそう、なら今までの分のツケ、すぐに払ってちょうだい」
「なにそれ、卑怯よ!」
「なにが卑怯よ、困った時はお互い様。早く来てね。じゃ~ねぇ」
そう言って電話は切れた。
私は繋がらなくなった携帯を見つめ唖然とした。
なんて横暴な奴なの!
誰が手伝いになんか行くか!
と思い布団を頭から被って丸くなった。
けれど、もう頭は冴え眠ることはできなさそうだった。
それに、優馬には散々世話になってるし、迷惑も掛けている。
こんなことでしか恩返しはできないかも、と私にしては珍しく殊勝な考えが頭を過り、覚悟を決めて起き上がった。
仕方ない、手伝いに行ってやるか。
私は簡単に身支度を整えて家を出た。
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