第19楽章 ノクターン第20番

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時計を見ると深夜0時を過ぎていた。 アマービレはもう閉店しているはずだ。 「ちょっとあんたにお願いがあって電話したのよ」 「お願い?」 「今日、ラストまで働いてくれるバイトの子が急に休んじゃって、閉店作業に時間がかかりそうなのよ。手伝いに来てくれない?」 「はあ? なんで私が」 「彼氏と会う約束してるから早く帰りたいのよ。手伝ってくれてもいいでしょ!」 「嫌よ、私だって明日仕事があるんだから」 「ちょっとくらい遅刻しても、あんたの所の店長なら許してくれるでしょ」 「だからってなんで私が今から手伝いに行かなきゃいけないのよ」 「あらそう、なら今までの分のツケ、すぐに払ってちょうだい」 「なにそれ、卑怯よ!」 「なにが卑怯よ、困った時はお互い様。早く来てね。じゃ~ねぇ」  そう言って電話は切れた。 私は繋がらなくなった携帯を見つめ唖然とした。 なんて横暴な奴なの! 誰が手伝いになんか行くか! と思い布団を頭から被って丸くなった。  けれど、もう頭は冴え眠ることはできなさそうだった。 それに、優馬には散々世話になってるし、迷惑も掛けている。 こんなことでしか恩返しはできないかも、と私にしては珍しく殊勝な考えが頭を過り、覚悟を決めて起き上がった。  仕方ない、手伝いに行ってやるか。 私は簡単に身支度を整えて家を出た。
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