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遠子さんはポロポロ涙を零しながら言った。
遠子さんが泣くから、私は泣けなくなった。
目の前で人が泣いていると、どうしてだか私は昔から泣けなくなるのだ。
「どこに行ったのか誰も分からないの?」
震える声で問う私に、優馬は悲しそうに頷いた。
「どうして洵はいなくなったの?」
すると遠子さんは泣いていた顔を上げ、キッと私を睨みつけた。
「だからあなたのせいって言ってるじゃない! あなたが洵をそそのかしたから。洵は、簡単に約束を破るような男じゃない。約束を破った責任をとっていなくなったのよ!」
「約束って?」
「誰ともセックスしないって。私だけの洵でい続ける約束よ」
「そんな約束おかしい! お金で洵を縛り付けて、洵の自由を奪って……。私だけの洵ってなによ。洵は誰のものでもないわ!」
「あなたに何が分かるのよ!
じゃあ、あなたなら洵にピアノを続けられるように資金援助をすることができたの?
できないから洵はピアノを続けられなくなって姿を消したのよ。
あなたと出会わなければ、洵は自分を責めずに済んだし、ショパンコンクールにも出場することができた。
もうちょっとだったのよ。
もうちょっとで洵は夢を叶えることができた!
あなたのせいで洵は夢とピアノを失ったのよ!」
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