第20楽章 ピアノ協奏曲第1番

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洵がまだ、アマービレにいた時にスケッチブックに描いた膨大なデッサンが、今とても役に立っている。 スケッチブックには、洵の男らしく長い指先が沢山描いてあった。 それらを下敷きにしながら、色を重ねていく。 私は最近、絵を描きながらいつも同じことを考えている。 成功者になれるのは、一握りの選ばれし人間だ。 成功者と同じくらい努力をすれば、同じように成功できるのか。 きっと、そんな甘いものではない。 何千何万と夢を叶えられなかった人間がいるからこそ、成功者は輝くのだ。 今、洵が輝いているように。 私は洵のようにはなれないかもしれない。 大きなコンテストで受賞して、仕事を沢山もらえるようになって、絵だけで生活ができるようにはならないかもしれない。 けれど、それでも日々の暮らしに満足して生き生きと歩んでいければ、それでいいじゃないか。 私は絵を描くのが好きだから描く。 たったそれだけのシンプルな想いを大切にすれば、こんなにも楽しく暮らせる。 ハッピーエンドには色々な形がある。 洵と結ばれなくたって、それがアンハッピーエンドになるとは、私は思わない。 私は私のハッピーエンドを見つける。 遠くから、洵を見つめ続ける。
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