第20楽章 ピアノ協奏曲第1番

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洵がショパンコンクールでセンセーショナルなデビューを飾ってから、すでに一年が経過していた。 洵は旅立つ前に私に言ったように、ヨーロッパを転々としながら音楽活動を続けているようだった。  一方私はというと、今でも元気にアマービレで働いている。 特に変わり映えのしない毎日だけれど、私の描いた絵が地方の小さな賞を受賞した。 洵の指先を描いた渾身の一作だった。 背景は深みのある黒。 様々な色を組み合わせて黒を作ったので、背景は単純な黒とはいえない奥行きのあるものに仕上がった。 そこに人間の手が浮かび上がり、何かを掴もうとしているような、何かを弾いているような、その手は何をしたいのか見る者によって解釈が異なるようにわざと曖昧にした。 男らしく大きく筋張った手でありながら、細長く繊細な指先は洵の内面を表している。 指先を見つめているだけで、子宮がゾクゾクするような色気を発している。 そして、指先の下にあるものは、ボウっと光る白い光。 この白い光は、ピアノの鍵盤と栄光を表現したものだ。 渾身の一作でありながら、地方の小さな賞しか取れず、しかも最優秀賞には選ばれなかった。 それでも優馬は自分のことのように喜んでくれて、定休日にアマービレで小さなパーティを開いてくれた。 店の従業員たちが祝ってくれて、こんな小さな賞なのに申し訳ないと思いつつも、素直に嬉しかった。
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