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会場は二階席と三階席まである大ホールだった。
大人数を収容できる会場にも関わらず、コンサートチケットは即日完売だったのだから洵の人気の高さがうかがえる。
会場にいる殆どが女性客で、若い子から年配の方まで年齢層に偏りはないが、アイドルのコンサートに来ているような一種の華やいだ雰囲気が感じられた。
私と優馬の席は一階席の真ん中より出口に近い方だった。
つまりは後ろ側の席。
ここなら確かに優馬が言う通り、洵が私の存在に気付くことは奇跡に近いだろう。
私は階段側の端の席に座りながらパンフレットを固く握りしめていた。
周りが洵の登場を今か今かと浮ついた様子で待っているのに対して、私だけ頭を下げて胸の動悸を感じながら目を瞑っていた。
「大丈夫?」
顔が青ざめている私の顔を覗き込むようにして優馬が聞いた。
「大丈夫よ」
私は引きつりながら笑顔を無理やり作る。
すると優馬は、それから何も言わなくなり、私のことは放っておいてパンフレットに目を落とした。
手汗が凄い。
足も震えている。
胸の動悸はさっきからどんどん激しくなっている。
洵を見るのが怖くて堪らない。
もうあれから一年以上経ったのに、私の胸には洵が色濃く残っていた。
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