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「ずいぶん遅かったな。本田香子。」
「…!!」
ガレージに車を停めると、腕組みしながら壁に凭れて立っていた男の声。
その眼光は鋭く突き刺さった。
「…なるほど。360kmも走ればこの時間か。
…どこで何をして来た?」
相変わらず穏やかな口調だが、多少怒りを感じる。
ここは正直に話した方がいいだろう。
「…ちゃんと理由を説明する。まずは荷物中に入れてコーヒー飲ませて。疲れたの。」
「……………」
…返答なし。
無言は"OK"と勝手に取らせていただくけど。
後部座席に置いていた荷物全部取り出すと、車の鍵をかけた。
「…!!」
ハァ…と小さな溜め息を吐くと、荷物を私から全部取り、中へ入っていった。
怒りと言うより心配させたっぽい。
どこかにリークされてないか。
逃げたのか。
事故にあったりしたんじゃないか。
この3つのうちの1つだろう。
薄暗い間接照明の灯る部屋に入ると、暖炉がついていて暖かい。
今日の気温は2℃。部屋は20℃くらいありそうで、半袖で過ごせそう。
(…暖めてくれたのかな…)
さっきの荷物といい暖炉といい、ちょっと紳士的なこの男。
昨日会ったときは怖かっただけだったが、今はそうでもない。
ただ、傷が癒えたときに、態度が変化しないかが気掛かり。
もし、体調が良くなるまでの世話人ならば、必要なくなってしまう。
そして、銃で撃たれるくらいだ。
仮にこの男が極悪人だったならば?
当然、私は消されるだろう。
(…でも…怪我人は放っておけない)
キッチンに向かうとやかんを火にかけ、ポケットから薬を取った。
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