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髪をタオルで纏めながらリビングに出る。 そこには川崎の姿はなく、奥へ歩を進めるとベッドに横たわっているのを見付けた。 重そうな目を開けると、私と視線が交わった。 サイドテーブルの上には、薬を飲んだ形跡。 近付くと、腕を取って思いっきりつねる。 「…痛みは感じますか?」 「……若干。」 多少の痛みはあるだろう。 モルヒネは麻酔じゃない。 (…よし。やるか) 決意をし、袖を捲る。 お湯を沸かし、カミソリを煮沸消毒。金属加工行程に含まれる油を綺麗に取り除き、消毒液を入れたボウルにカミソリとピンセットを入れる。 ごみ袋を切って開き、傷口のある方のベッドに敷く。綺麗なタオルをそのごみ袋の上に敷いて、タオルに重なるように川崎の身体を横たえる。 こうすれば、血がベッドに滲むことも、流れた血が広がることもない。 「川崎さん。シャツを捲れますか?」 「……ああ。」 ガーゼを取り傷口を見ると、やはり傷口が閉まっていた。 人間の自力更新力とは恐れ入る。 傷を負えば、直ぐに治癒しようとする力。 カミソリとピンセットの入ったボウル、タオル数枚、ガーゼとテープ、すべてをベッド脇に置き、一応確認のためPCで動脈を探す。 (脇腹…動脈はない。筋組織だけなら自然治癒出来る。大丈夫…) ベッドの上部にタオルを二枚括り着け、一枚手に取ってベッドの端に座る。 「…川崎さん。気分は?」 「…悪くない。」 「多分力が入りすぎると思うから、両方のタオルを握って爪で手を傷付けないようにして。 それから、このタオルを口に含んで噛んでて。食い縛って歯が砕けちゃうから。」 考えて、少しでも傷が増えないように。 小さく頷くと、タオルを噛み締め、握り締め…
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