2467人が本棚に入れています
本棚に追加
無駄なお喋りをしない川崎は、翌朝起きても、私の言う通りにベッドから起き上がらずに過ごした。
「…川崎さん。母屋に行ってくる。」
「…俺も行く。」
「直ぐ戻ってきますから。寝ててください。」
「ダメだ。俺も行く。」
「川崎さん!大丈夫です。30分もかからない。今起きたら傷口開いちゃいます。休んでてください。帰ったら消毒しますよ。」
「……………」
自分を撃った相手が近くにいるから心配しているのか、それとも逃げないように見張っているのか。
定かじゃないが、とにかく用事を済ませて早目に帰った方が安心するだろう。
母屋へ行くと手記を借り、足早にペンションに戻る。
「……………」
その途中、車道ではない場所にタイヤの跡を見付ける。
(…出てきたな…)
昨日の雪の足跡が功を奏した?
だとしたら、ここからは時間との勝負になる。
(4日目…意外に遅いな…)
「ただいま戻りました。」
「……………」
色々考えながら戻り、川崎のベッドに近付くと様子を伺う。目が合うと、また溜め息。
「…消毒しましょう。ついでに身体を拭いて服も着替えて。タオル濡らしてきます。」
「ああ。」
お湯で濡らしたタオルを渡し、5分ほど時間を空けて川崎の元へ向かう。
着替えた川崎の傍に寄り、タオルを持って服の中へ手を入れ背中を拭き、横にならせ消毒をする。
(膿んでない…良かった…)
徹底的に消毒をしているからか、傷も化膿せずに済んでいる。
傷口が開かないようにテープで固定し、ガーゼを当てて終了。
……グゥゥーー……
と。川崎のお腹が鳴った。
…そう言えば、まだご飯を食べてなかった自分に気付く。
川崎を見れば、真っ赤な顔で外を向いてて。聞かれたことが恥ずかしいらしい。
「ごめんなさい。直ぐ何か作る。好き嫌いないよね?ちょっと待っててください。」
「……香子。…悪い。ありがとう。」
「……………」
今まで見てた中で、一番穏やかな表情。
最初のコメントを投稿しよう!