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「名前はカミーラ、吸血鬼よ。人間の住居なんて、どこからだって入れるわ」
彼女はこの状況に似つかわしくないほど、とびっきりの笑顔を見せた。
私は彼女の言葉を頭の中で反芻する。
カミーラ。
キュウケツキ……。
……吸血鬼?
「本当に吸血鬼なの?」
「そうよ」
……信じていいのだろうか?
いや、そんな馬鹿な。
ありえない!
少し頭のおかしな人なんだろうか?
でも、確かに彼女は突然部屋に現れたし、今まで見た誰よりも美しいその姿、透き通るような白い肌、どれも人間離れして見える。
私が考えている事などお構い無しに、彼女が囁いた。
蒼い空に溶けるように甘い囁き。
「ねぇ、あなた。あなたの世界が嫌なら、私の世界に来ない? 」
* * *
「日本語、お上手なんですね。」
「どこの国の言葉だって話せるわ。伊達に生きていないもの」
私の隣に座った彼女は、話す度に天使のような笑顔をこぼす。
「……何歳なの?」
「それはレディーの秘密よ」
今度は少しミステリアスに微笑した。
本当に吸血鬼ならば……何百年と生きていたりするのだろうか?
「どうして私のところに? 女性の吸血鬼なら、男性のところに現れたりしないんですか?」
「吸血鬼にも色々好みがあるのよ。別に男の吸血鬼だからって女性の血しか飲まないわけじゃないし、女の吸血鬼だからって男性の血しか飲まないわけじゃない」
「そうなんだ。」
「そう、男性の血を好む者もいれば、女性の血を好む者もいるし、人間以外の動物の血を好む者もいるわ。処女の血にこだわるってのも、人間が勝手に言ってる事ね。好みの違いだけ」
そう言って彼女は蒼い瞳で私を見つめた。
「私の好みを知りたい?」
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