blue moon

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 *  *  * カミーラの手首から溢れる血を私は貪るように飲む。彼女の手首に口を付け、細く白い腕に絡み付くようにして。 私、一之瀬優花が吸血鬼になって5年が過ぎようとしていた。 私はカミーラと世界中を旅した。 2人で何度も美しい景色を見た。 都会の夜景も深い山からの満点の星空も。 まるで夜の支配者になったような、そんな夜を何度も飛び越えた。 でも、私はまだ一度も人間から血を吸った事はない。 私はいつも、カミーラから血を貰う事で渇きを癒していた。 「優花、飲み過ぎよ。私が貧血になっちゃうわ」 カミーラが私の口を手首から離した。 私は少し名残惜しそうにカミーラを見つめる。 カミーラがクスリと笑う。 5年前と変わらない笑顔。 「口の周りについてる」 そう言うと、カミーラが私の口の端を手で拭って、それから唇を近付けてきた。 血の味がするキスだけは昔よりも濃厚になった。  *  *  * 「ねえ、優花。懐かしい?」 カミーラと私が見下ろす町は、以前、私が人間として暮らしていた町。 「……少しだけ」 懐かしくないと言えば嘘になるが、辛い思い出が甦る町を懐かしみたくない気持ちがどこかにある。 それでも私は家族の事を思った。 考えてみたら、人生を左右するあんな大きな決断を一夜にしてよく行えたものだ。 人間をやめて吸血鬼になる。 初めて出会った謎の女性に付いていってしまうなんて……。 お父さんとお母さんはどうしたのだろうか? 今、どうしているのだろうか? 私はとんでもない決断をしたのだ。 「今日でね、あなたと出会って5年になるわ」 町を眺めながら懺悔する私の耳にカミーラの声が聞こえた。 それでカミーラは私をこの町に連れて来たのだろうか? 「だから、あなたとお別れをしようと思うの」 「えっ……」 「今日、あなたは人間の血を自分で飲みなさい。そして、私とさよならをするの」 「……どうして!?」 「吸血鬼の巣立ちよ」 「い、いやだ! 私はカミーラと居たい!」
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