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「いい? 首筋に噛みつくのは吸血鬼にしたい相手だけよ。ただ血が欲しい時は眠らせて軽く皮膚を切って血をもらう」
カミーラは私の悲痛な叫びに動揺する事なく、微笑みを湛えたまま最後の授業を続ける。
吸血鬼になり、人間とは違う力を得た。
カミーラは、見つめるだけで相手を眠らせ、ナイフのように鋭い爪は何でも切り裂いた。
私にもその力が少しある。
力も人間の時より何倍も強くなった。
でも、例え1人で生きていく力があったって、カミーラと一緒じゃなきゃ、一緒じゃなきゃ私はいやだ!
「どうして? どうして、そんな事を言うの?」
「どうしてかしらね。ずっとこうしてきたのよ。最後は私から去る……。たぶん、臆病なのね。去られるのが怖いのよ」
カミーラが悲しげに微笑む。
「私はいなくなったりしないっ! カミーラから離れたりしないよっ!」
私の声にカミーラは首を振る。
「それは無理なのよ。私より長生き出来る吸血鬼はいないの。だって私は……」
一際強い風が吹き、カミーラの声をかき消す。
聞こえなかった言葉。
でも、わかる。
カミーラは特別な吸血鬼。
何百年と1人生きてきた吸血鬼。
仲間が生まれては消え、生まれては消える中、悠久に生き続ける事が義務付けられた存在。
…………吸血鬼の女王。
「優花、あなたと過ごした日々楽しかった。だから、またいつか、会いましょう」
カミーラが私を強く抱き締めた。
「カミーラ……好き。愛してるんだから」
「わかってるわ、匂いがするもの。……私もよ」
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