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約束―――した覚えのないそれに私は縛られる。
「……したかな、忘れた」
美月を押しのけ窓を背にして立つと、美月は外を眺めたままくすりと笑って私の手を指さす。
「嘘、覚えてる癖に……ほら、それ環ちゃんの癖。嘘つくと親指を撫でるの。何か秘密があるの?」
私は祈るように組んでいた手を離して後ろにまわして、美月から目を逸らす為に再び渡り廊下の桐嶋を見た。
「そんな事ないよ」
「ねえ、環ちゃん。私環ちゃんが大好き、だから環ちゃんが好きなモノは何でも知りたいの」
美月は後ろから私の腰に手を回すと耳元でそう囁く。
それは合図だ。美月がそう言ったら私達のゲームが始まる。
「ねえ、環ちゃん。桐嶋先生って素敵ね」
美月は私が好きなモノをいつも欲しくなる。
美月は窓から顔を覗かせると桐嶋にヒラヒラと手を振った。桐嶋は驚いたように美月を見ると、見ていたのがばれて気まずいのか小さく手を振り返す。
「そうかな。いつも気怠げにため息ばかりついているし、頼りなさそうだし、美月には似合わないよ」
「そう? でも環ちゃんがいつも見てるからなんだか好きになっちゃった」
くすくすと笑いながら美月は私の指に自分の指を絡める。
「でも、一番好きなのは環ちゃんだから」
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