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――――本当の愛? 美月は一体何を言っているんだろう。
「どうしてそんな事言うの?」
「先生はいつもの男の人たちみたいに、私に触れないの」
じりっと焼けるような熱さが胸に広がる。気づいていた、美月の様子が最近違うのは。でも、気づきたくなかった。
「そんなの、教師だからだよ。手を出したらばれた時大変だもの」
「でも言ってくれたの、卒業するまで待つからって」
何でこんなに苛々するんだろう。何でこんなに不安になるんだろう。
「そんなの嘘。ただ面倒な事になりたくないだけだよ。いつもみたいに早く傷つけてやればいいのに」
――――もしかしたら私は獲物を間違えたのかもしれない。
美月は悲しそうに顔を歪ませじわりと涙を浮かべる。そんな美月の顔は見たことがなかった。
違う、こんなの望んでない。
「ねえ、どうしていつもみたいに言ってくれないの? 環ちゃんが誰よりも好きだって。だから、もう他の人を見ないでって」
ゲームが終わると穢れを落とす儀式みたいに美月は私に触れた。そうすることで私は美月の消えない傷や痛みがそこにある事を確認できたのに。
それなのに美月が言ったのは、私の望まない言葉だけ。
「ごめんね、環ちゃん。先生の事、本当に好きなの」
冷たくなっていた体が一気に煮えたぎった気がした。そんなの駄目、許さない。美月は私の人形なのに。誰にも盗られたくないのに。
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