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「東雲さんってさー」
クラスの後ろの方で、女どもがひそひそ話している。
「なんか匂うよね。なんつーか、台所の匂い?」
「おうちがすごく汚いとか?」
「まさかホームレス、、、?」
普通なら転校生の1週間目ってのは、好奇心やらおせっかいやらで、まわりに人だかりができるもんだ。
なのに彼女には、みな3歩くらい離れて、話しかけようとする。
なんなんだこの匂い。なんかおいしそうなにおいでもあるんだけど。
「これから夏休みにある林間学校のグループ分けをするぞ。まだ早いと思うかもしれないが、グループ研究もあるから、早めにスタートする」
4月のある日、担任の山川先生の一言で、仲良し同士がわらわらと教室のあちこちに固まった。
このグループで一緒に自然学習をしたり、飯の準備をしたりするんだ。
男と女はやっぱり別々のグループになってるな。
が。
東雲さんは、教室の真ん中にぽつねんと一人でいる。
来たばかりでまだ知り合いがいないから、、、ってだけじゃないみたいだ。
なんか、避けられてる? まさかあの匂いのせいでっ!?
いくらなんでもそれはないだろ。無駄に正義感の強い僕は納得ができなかった。
「おい」 啓介に言った。
「彼女いれてやろうぜ」
「僕らんとこにかあ?」
「ん」
啓介や他の連中の返事を待たずに、俯いて立っている東雲さんのところへ行った。
「僕らのグループに入んなよ」
「え、う、うん、でも」
やっぱ男だけのグループじゃ嫌かなあ。
「あ、ありがと。考えとく」
そういいながらも、嬉しそうに微笑む彼女に思わず見とれてしまった。
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