【2】カノジョの謎

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それからもやっぱり、クラスの女どもは東雲さんを仲間に入れようとしなかった。 「東雲さんって、カレー屋の2階に住んでんだって?」 クラスでも一番声のでかい女が言う。 なんでそんなこと、、、。あ、啓介のやつめ。 「東雲かれんさんじゃなくて、東雲カレーさんなのね!」 「きゃははは!」 「確かにそういえば、カレー臭いよねぇ」 「東雲かれーくさちゃん!」 「おい、いい加減にしろよ!」 さすがに腹に据えかねて口を挟んだが、こっちは1人、あっちは大勢。 その間東雲さんはずっと俯いていた。 昼休み、職員室から出てきた東雲さんと鉢合わせた。 「東雲さん」 僕の声に顔をあげた彼女は涙目だった。 「相談したんだけど、先生は匂わないって言うの、、、」 ーー 自分ではよくわからないの。ホントのこと言って? ほとんど聞き取れないような声で、彼女はつぶやいた。 どうやったら彼女を助けてあげられるだろう。 「ねえ、君のかばんかして?」 匂いを嗅いでみる。  かばんはにおわない。 「髪、匂い嗅いでもいい?」 「う、うん、、、」 恥ずかしそうにいう彼女。か、可愛い、、、。 くんくん。女の子の柔らかいヘアだ、、。 うっ、へんなの。なんだか妙な気分になりそうだ、、、。 「あ、あの、」 彼女の声にはっと我に帰る。 「匂わないよ。やっぱり服だけみたいだね」 探偵風に、勤めて冷静を装って言った。 「そ、そう?」 真っ赤になっている。 戸惑っている姿も、可愛い。 やっぱなんとしても理由を突き止めてあげなくちゃ。
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