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「ここから、君の家をようく見てごらん」
「あ、洗濯物を取り込まないと!」
すでにパラパラと雨が降り出した中、東雲さんが焦って言った。
「待って、その前に。干してある洗濯物の下に、何がある?」
カノジョの謎
「何って、なんか筒みたいなもの、、、?」
「あれはなんだ?」 啓介が不思議そうに言う。
「1階のカレー屋のキッチンの排気筒だよ。換気扇を通して、あそこから中の料理のいろんな匂いやガスが出てるんだ」
その真上に干されている、東雲さんちの洗濯物。
道理で、、、。
***
「よし、今日は林間学校のグループ分けを最終決定するぞ!」
担任の山川先生が、ことさら大きな声を張り上げてホームルームの始めに言った。
「かれんちゃん、こっちおいでよ?」
女どもが言う。
「いや俺らと共同学習やろうぜ?」
にやけた別のヤツが誘っている。
東雲さん、どうするんだろ。
でもよかった。
あれから彼女はすっかり人気者だ。
匂い事件が解決して、そこに残ったのは可愛くて頭がよくて、思いやりのある女の子だったのだから、当たり前だけど。
でもなんかちょっと、寂しいかな、なんて、、、。
「ごめんね、でも、私、柊哉くんのところがいい」
へ?
トコトコっと東雲さんは僕の方に歩いてきた。
「柊哉くんのグループに入っていいよね?」
じーっと僕を見つめて聞いてくる。
「え、あ、う、うん」
「お、いいじゃんいいじゃん、かれんちゃーん、僕らのグループにようこそ! 仲良くしようぜ~!」
お調子者の啓介の声には見向きもせず、「よろしくお願いします」 と僕にむかってぺこりと頭を下げた。
わ、な、なんだろ、これ。
勝手に胸がドキドキし始める。
でも、なんだか楽しい1年間になりそうだ!
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