【2】カノジョの謎

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*** 「ここから、君の家をようく見てごらん」 「あ、洗濯物を取り込まないと!」 すでにパラパラと雨が降り出した中、東雲さんが焦って言った。 「待って、その前に。干してある洗濯物の下に、何がある?」 カノジョの謎 「何って、なんか筒みたいなもの、、、?」 「あれはなんだ?」 啓介が不思議そうに言う。 「1階のカレー屋のキッチンの排気筒だよ。換気扇を通して、あそこから中の料理のいろんな匂いやガスが出てるんだ」 その真上に干されている、東雲さんちの洗濯物。 道理で、、、。 *** 「よし、今日は林間学校のグループ分けを最終決定するぞ!」 担任の山川先生が、ことさら大きな声を張り上げてホームルームの始めに言った。 「かれんちゃん、こっちおいでよ?」 女どもが言う。 「いや俺らと共同学習やろうぜ?」 にやけた別のヤツが誘っている。 東雲さん、どうするんだろ。 でもよかった。 あれから彼女はすっかり人気者だ。 匂い事件が解決して、そこに残ったのは可愛くて頭がよくて、思いやりのある女の子だったのだから、当たり前だけど。 でもなんかちょっと、寂しいかな、なんて、、、。 「ごめんね、でも、私、柊哉くんのところがいい」 へ? トコトコっと東雲さんは僕の方に歩いてきた。 「柊哉くんのグループに入っていいよね?」 じーっと僕を見つめて聞いてくる。 「え、あ、う、うん」 「お、いいじゃんいいじゃん、かれんちゃーん、僕らのグループにようこそ! 仲良くしようぜ~!」 お調子者の啓介の声には見向きもせず、「よろしくお願いします」 と僕にむかってぺこりと頭を下げた。 わ、な、なんだろ、これ。 勝手に胸がドキドキし始める。 でも、なんだか楽しい1年間になりそうだ!
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