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「どうして貴女なんかが...」
仄暗い部屋、歪な光を放つ水晶玉を覗き込み、そう彼女は呟いた。
「あぁ、私の愛しい方。私の方が貴方を愛してさし上げられるのに...」
水晶玉にそっと触れ、彼女は溜息を漏らした。
それは、とても残念そうで、今にも泣きだしてしまいそうなか細いものだった。
どれぐらい水晶玉を見つめていただろうか、彼女はハッとしたように目を見開くと、みるみる笑顔になった。
「...そうよ。そうよね!やっぱりアレしかないわ!あぁ、待っていて下さいね、愛しい方」
先程と違い、その声には喜びが滲みでている。
彼女は、最後に水晶玉を一瞥すると静かに部屋を後にした。
静寂の中、光る水晶玉には一組の男女の姿が映し出されていた。
彼女の想いを、これから起こる事を知っているのは水晶玉だけ。
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