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消えちゃいたい...
ふっと頭に浮かんだ考えだった。
高校生の時に両親を交通事故で亡くしてから、今日まで常に気を張り詰めて生きてきた。
両親の分まで生きていかなくては、と思っていた。
それがここにきて一気に崩れていくような感覚。
そんな時だった、突然智花の目の前が白く強く光り輝いたのは。
「なっ」
あまりの眩しさに目を瞑ると同時に、智花の意識も遠のいていく。
「捕まえた」
誰の声だったのか、薄れゆく意識の中で智花は確かにその囁きを聞いた。
それは、とても嬉しそうな女の声だった。
眩しいほどの光がおさまると、そこには意識を失った智花の体が横たわっていた。
それも一瞬で、ふっと瞳を開けた智花はあたりを見回すと体を起こす。
しばらくボーッとしながら部屋を眺め、次いで自身の手に視線を向ける。
「ふふ..」
目の前で自在に動く手を確認すると、瞳を細めて嗤った。
つい数分前に見せていた苦悶の表情ではなく、それはそれは嬉しそうだった。
更に周りを見渡し、部屋にある姿見を見つけると立ち上がりそちらへと軽やかに歩いて行く。
「♪~♪、ふふふ」
姿見の前に映る自分の姿を見つめ、鼻歌を歌いながらクルリと回ってみせる。
「待っていて、愛しい方」
鏡に触れて笑うと、智花であるはずの人物はそう呟いた。
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