第一章

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その日、ラズリ王国の宮廷魔導師が、ある一点から発せられた魔力を感知した。 それは、ほんの一瞬で消え去ったが、彼は言い知れぬ不安を感じていた。 直ぐ様上司のもとへと駆け付けると、無理矢理半休をもぎ取りその場所へと向かう。 「いったい何があったと言うんだ」 焦る気持ちとは裏腹に、空はどこまでも青く澄み渡っていた。 そんな空を恨みがましく睨みつけると、愛馬を最大限の早さで駈けさせる。 彼が向かう先、自分の家へと。 時間にして10分ほど駈けただろうか、街の外れ、森の中にその館は姿を現した。 「まぁ、まぁ!坊ちゃん、どうなさったので?」 すごい勢いで門を入ってきた彼に、丁度庭を掃除していた中年の女性が驚きの声を上げた。 彼は、馬から降りると労るように数回その背中を撫で、次いでその女性へと視線を向ける。 「父上と母上は?無事か?」 「はい?お二人共お部屋にてお茶をしていらっしゃいますよ?」 彼の突然の質問に女性は困惑しつつも答えた。 それを聞くなり、足早にドアへと向かうその背中を、女性は不思議そうに眺めていた。
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