3人が本棚に入れています
本棚に追加
その日、ラズリ王国の宮廷魔導師が、ある一点から発せられた魔力を感知した。
それは、ほんの一瞬で消え去ったが、彼は言い知れぬ不安を感じていた。
直ぐ様上司のもとへと駆け付けると、無理矢理半休をもぎ取りその場所へと向かう。
「いったい何があったと言うんだ」
焦る気持ちとは裏腹に、空はどこまでも青く澄み渡っていた。
そんな空を恨みがましく睨みつけると、愛馬を最大限の早さで駈けさせる。
彼が向かう先、自分の家へと。
時間にして10分ほど駈けただろうか、街の外れ、森の中にその館は姿を現した。
「まぁ、まぁ!坊ちゃん、どうなさったので?」
すごい勢いで門を入ってきた彼に、丁度庭を掃除していた中年の女性が驚きの声を上げた。
彼は、馬から降りると労るように数回その背中を撫で、次いでその女性へと視線を向ける。
「父上と母上は?無事か?」
「はい?お二人共お部屋にてお茶をしていらっしゃいますよ?」
彼の突然の質問に女性は困惑しつつも答えた。
それを聞くなり、足早にドアへと向かうその背中を、女性は不思議そうに眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!